畑の良し悪し?


クロソラスズメダイ 2007.01.21 奄美大島

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 新聞紙上でも取り上げられた、クロソラスズメダイが餌とする特定の海藻を育ててるために、競争種となる海藻を除藻しているという話題は以前にも紹介【リンク】しました。その後、奄美大島や石垣島でクロソラスズメダイをみるたびに気にしつつ観察していたのですが、不思議なことにクロソラスズメダイが海藻を突付いているというシーンにあまり出会いません。同じ仲間のアイスズメダイなどは同じぐらいの時間観察していても、頻繁にそのような行動が見られるのですが、クロソラスズメダイの場合、たまたま食事時間に行き合わせていないだけなのか、あまりそのような行動が見られないのです。

 そこで、クロソラスズメダイの縄張りにはどんな海藻が生えているのか見てみると、死んだ枝サンゴを棲家にしているクロソラスズメダイの縄張りには、糸状の藻類が房状に密集して生えているのがひと目で分かりました。専門家に画像を見ていただいたところこれはテングサモドキの1種のようですが、よく見るとその表面は厚く泥で覆われていて、これが日常的に食べられているようにはとても見えないのです。死んだ枝サンゴの群落は、だいたい5~8m四方ぐらいの広さがあり、枝サンゴがまだ骨格を残しているような場所では、隠れ場所も多いので複数のクロスズメダイが狭い縄張りを接するように同居しています。いっぽう、サンゴの骨格が完全に崩れ落ちてしまったような場所では、サンゴが岩のような状態になり、砂轢底に孤立するパッチリーフのような地形になります。このような場所には、多くの個体は棲めないので、普通は1~2個体が占有しています。そして、岩肌のように平らになったところは、枝サンゴの間に密集している房状の糸状藻類ではなく、それよりずっと細くて短い糸状の紅藻類に覆われています。このような海藻についてはまだ研究が進んでいないため種類は特定できないのですが、イトグサもしくはテングサモドキの仲間の可能性が高いと思われます。




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kuro-ms-ms2.jpg「集団型」の藻園、10個体以上が密集して暮らす。
サンゴの間には太くて長いふさふさした藻類が密生していた。

 このように、同じ海域で隣り合うようにして棲むクロソラスズメダイでも、ちょっとした場所の違いにより、群れの構造、食性なども異なる2パターンがあるように見えるのですが、実際のところはどうなのでしょうか? 観察をしていると、枝サンゴに集団で棲むクロソラスズメダイは比較的臆病で、少し近寄るとサンゴの間に隠れてしまい、なかなか出てきません。いっぽう、崩れたサンゴのパッチリーフに棲む個体は気が強く、すぐに興奮色になってダイバーさえも牽制してきます。また、枝サンゴ群落の一部が風化して崩れた部分には、パッチリーフと同じような細くて短い紅藻類が生えていることがあります。このような場所は、サンゴ群落の外縁にあたることが多く他の藻食魚による侵入も受けやすいと思われるのですが、そのせいかここを守るクロソラスズメダイも中心部に棲む個体よりは攻撃性が強いように感じられました。

 逆に考えれば、大きなサンゴ群落に複数のクロソラスズメダイが縄張りを分け合って暮らすことは、お互いがライバルということで、時にそれが原因と思われる争いなども見られるのですが、こと他の藻食魚(ブダイやニザダイなど大型のものも多い)からの防御という視点でみれば、「集団防衛」の効果を生んでいることになります。




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kuro-ms-dokuriru-ms2.jpg独立型」の藻園。平らな岩の表面には、

枝サンゴの間のものとは異なる、細くて短い藻類が生えていた

 わずかな観察例から結論のようなものを引き出すのは危険ということは十分承知しつつも、ここで次のような仮説を考えつきました。あくまでも「連想ゲーム」みたいなものなので、その点は割り引いてお読みください。

1. 強いクロソラスズメダイは外部からの脅威を受けやすい開けた場所を縄張りとする。
2. 弱い個体は、隠れ場所の多いサンゴ群落に小さな縄張りを接するようにして集団で暮らす。
3. 開けた場所は、細くて短い(柔らかくて美味しい?)紅藻類の生育に適している。
4. 枝サンゴの間は餌となりにくいテングサモドキ類が優占し、餌に適した藻類は生育しにくい。
5. よって、強いクロソラスズメダイは餌の豊富な縄張りを独占することになる。

 これを確かめるには、排除実験などを行い、開けた場所に棲む個体が消失した場合、集団のうちどの個体がその場所に入るか・・・などを調べなければなりません。また、実際彼らが何を食べているのか、さらにどの種類の餌が高い栄養価を持つのか、胃内容物などの検査を行って調べる必要もあるでしょう。とても、一般のダイバーが遊びでできる内容ではないし、いずれ専門家による研究も進むでしょうから、そこまでやる気もないのですが、今後、潜水観察だけでどこまで確かめることができるのか、遊び感覚で観察だけは続けてみたいと思っています。



“畑の良し悪し?”に2 件のコメント


  1. つねみ

    なるほどー!テングサモドキ属はクロソラ達にとって、美味しくないかもしれないということですね。確かにアイスズメダイももっと柔らかそうに見える海藻の方を積極的に食べていたように思います。
    続きが楽しみですー!

  2. 魚っちゃー

    あ、あまり簡単に信じないでくださいね。(^^;;
    ・・・という可能性も考えられる、ぐらいの話なので、
    実際どの海藻を食べているかから確認しなければ、確かな話はできません。
    ただ、漠然と見ていても何も分からないので、とりあえず仮説を構築して、
    観察していくというほうが手がかりはつかみやすいように思えます。
    みなさんからの報告もお待ちしていますよ~。