ロングラン求愛


ボウズコウイカの求愛 2007.04.22 富戸

動画を見る mp4 4:46

 

 伊豆海洋公園に不穏な高波が立っていたので、急遽富戸へ移動しました。風裏にあたるせいか、見た目は穏やかでしたが、海中は意外にうねりが強く、浮遊物も多くてあまりいいコンディションとはいえません。心なしかさかなの姿も少なく、久々の富戸なのにいまひとつ・・・と思いはじめたその時、大きな三角型の岩礁の上で、脚を「プリッチェル」のようにグニャグニャと曲げたボウズコウイカを発見しました。このポーズはオスの求愛ポーズですから、近くにメスがいないかと見渡すと、いつもならあまり近くでは見られないメスが、すぐ近くで産卵場所を探しています。これなら期待が持てるかも・・・と、さっそく腰を落ち着けて観察に入りました。

小さなカイメンに脚を挿し入れ卵を産み付けている

 ボウズコウイカは、カイメンの中などに卵を産み付けることが多いのですが、粒のような小さなカイメンだと海藻に隠れてしまい、ちょっと見ただけではカイメンに産み付けているようには見えません。メスは慎重に脚を伸ばして場所を確認し、ここと決めると蝕腕を長く伸ばしてカイメンの穴に挿し入れ、ひとつことつ丁寧に卵を産み付けていきます。産卵の合間には、脚を丸めるようにして身体を波打たせるような動きを見せるのですが、これは卵巣から卵を取り出し蝕腕にセットしているかのようにも見えます。産卵はとてもゆっくりしたペースで長い時間をかけて行われますが、その間オスと交接するところは未だに確認されていません。おそらく、1回の交接で溜め込んだ精子を産卵のときに受精させているのでしょう。
それでも、産卵中のメスには、常にオスがつきまとい熱心に求愛をしているのです。にもかかわらず、メスは一向にオスを気にする様子もなく、無心に産卵を続けるというのがいつものパターンでした。

一瞬イカとは思えないカタチに変身して激しく求愛!

 オスは、なんとか雌に近づこうとするのですが、メスが拒絶しているのが分かるのか、あるいはメスが怖いのか、ちょっとにじり寄ってはダッシュで後ずさり・・・というような、気弱な求愛を続けます。しかし、こんなことを繰り返しているうちに、たまにはメスもそれに応えるかのようにオスの接近を許し、ちょっとだけ脚を上げて見せたりすることもあります。さらに、この日はオスと一緒に中層のほうまで浮き上がり、目の前のオスの求愛を受ける姿まで見られました。オスは求愛の頂点に達すると、フラッシュを光らせるかのように、白い脚を大きく上下に伸ばして激しく動かしました。しかし、メスが交接を許すことはついになく、相変わらず産卵を続けるのでした。

 この日、1本めでこのペアを発見したのですが、2本めに同じペアを訪ねて見ると、相変わらず同じように産卵・求愛が続いていました。僕たちが確認したかぎりでも2時間近くは同じ行動を続けていることになりますが、実際はさらに長い時間をかけているのでしょう。オスの粘りには頭の下がる思いですが、それにしても交接はいったいいつになったら行われるのでしょうか?



コメントは受け付けていません