透明軍団大爆発

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ソラスズメダイ幼魚 08/02/2008 伊豆海洋公園

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  長い間同じポイントに通い続けていると、年によって「今年は○○をよく見かけるな」とか、「今年は××を見かけないな」などと感じることがあります。その年の気候や水温、潮流の変化、あるいはさかなの種類によるライフサイクルの違いなど、理由はいろいろ考えられますが、最近は地球温暖化や人為による環境変化が原因ということも考えられるので、こうした変化には注意が必要なのかもしれません。

 それはともかくとして、今年の伊豆でやたらと目立つのがソラスズメダイの幼魚です。夏に多くなるのは例年のことですが、今年は量がハンパではありません。いたるところ宝石箱をひっくり返したかのように、きらめく青であふれ返っているという感じなのです。この中には、着底直後と思われる透明な個体も少なくありません。例年なら、10匹前後の集団に1,2匹混じっているかどうかという感じ。朝に見つけても、午後同じ場所を探して再度見つかるということは滅多にありません。なので、着底した幼魚が色づくまでには半日ぐらいという短い間しかないのでは・・・と想像していたのです。しかし、今年は透明な幼魚もやたらに多く見かけました。10匹ぐらいの中の半分以上が透明という集団も珍しくなかったし、中には少し成長した青みがかった透明個体が20匹ほどの群れになっているのも見られたのです。

 岩の陰にいる小さな集団では、頭部以外はまったく無色透明な1.5cmクラスの個体が、海底にへばりつくようにしていました。いっぽう、2.5cmクラスの個体は透明部分がうっすらと青みがかり、個体によっては尾鰭のあたりが黄色みを帯びています。このステージの幼魚は海底から少し離れて岩に寄り添うようにホバリングし、波に合わせて向きを変えるときも一斉に動き、群れとしての統制がとれた行動を感じさせます。面白いことに、どちらのステージでも一緒にいる青い個体は、透明な個体とほぼ同じサイズ。どうやら、身体の成長と、体色の変化は必ずしも一致してはいないようです。

 

sorstoumei2.jpg1.5cmサイズの透明個体、頭骨と内臓、骨以外はまったくの無色透明

  さて、群れになっている水色がかった透明の幼魚ですが、これまで伊豆ではあまり見た記憶がありません。唯一鮮明に記憶しているのは、去年の8月20日に、20匹ぐらいの群れがボール状の塊になって、中層を泳いでいる姿です(過去記事参照)。この時は、後を追っていくと岩陰に逃げ込んで他のソラスズメダイとともに落ち着いたので、もしや浮遊生活後に着底した瞬間?・・・・なんて思ったものでした。しかし、これより小さい無色透明の幼魚がすでに着底していることを考えると、これは少しヘンです。

 例年、伊豆半島では、まず6月終わりぐらいにソラスズメダイの幼魚が現れ始めますが、なぜか見られるのは青い個体ばかりです。それから1ヶ月ぐらいの間に、ポチポチと透明な幼魚が現れはじめるというのがいつものパターン。ですから、最初に現れる青い幼魚は伊豆以外の場所から流れてきて着底したもの、後から現れる透明な個体は地元伊豆産なのではないかと想像していました。そう考えれば、中層を泳いでいた群れは、伊豆以外の海で生まれたものとも想像できます。しかし、今年のように多数の幼魚を見た後では、ことはそんなに単純なものではないという気がしてきました。

 人づてに聞いた話なので真偽のほどは不明ですが、クマノミなどは浮遊生活から着底しても、その場所が気に入らないとまた透明に戻って、移動することがあるというのです。これが事実だとすれば、去年中層を泳いでいた幼魚の群れは、着底した後、さらによい場所を求めて移動していたと理解できますし、体長と体色の関係がバラバラというのもまあ納得がいきます。つまり体色は成長度合いと比例して変わるわけではなく、着底生活に移る時点のタイミングと環境により、かなり自由度をもって変化しているのではないでしょうか? どこかの浅い海で孵化した後、長い浮遊生活の旅を経て安住の地に辿り着いた幼魚たち。そこから着底して終の棲家に落ち着くまでには、まだ人間に知られていないたくさんのドラマが隠されていそうです。



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