未知との遭遇

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樹手目ナマコの1種 01/11/2009 奄美大島

さかなやウミウシに興味を持っているダイバー(研究者)は多いので、ふつうに見ると「いったいドコが違うのよ~」というぐらいの違いでも、アッという間に「新種だ、別種だ」の話で盛り上がります。それほどポピュラーではありませんが、甲殻類もファンが多いので、ちょっと調べれば大抵のものは名前ぐらい調べがつきます。ところが、他の無脊椎動物、とくに棘皮動物とか、刺胞動物になると、資料も少なく、「いったい何の仲間?」というところから始まって、名前のないようなヤツがゴロゴロしているから困ったものです。

さて、奄美大島で見かけた上の画像の物体。直径が35cmはあろうかという大物なのに、これまで見たこともない生物でした。イソギンチャクにも見えるし、腕のあたりの質感はトサカのようでもあり。いろいろ考えた挙句、「ヒョッとしてナマコの仲間?」と思いついて調べたら、やっと当たりがありました。ナマコの中でも「樹手目」という仲間に属する1種なのですが、この仲間では観賞用としても人気のあるアデヤカキンコ、伊豆や東北に分布するイシコの他は、ネットで調べても「樹手目の1種」とされたものばかりで、ほとんど種の同定はされていないようです。

 

で、「樹手」という名にふさわい「枝」の部分ですが、これは触手になります。よく見るナマコは、口の周囲の短いヒゲのような触手で海底の小生物などを捕食していますが、樹手目の場合は触手を伸ばして水中を漂うプランクトンなどを捕食しているわけです。この捕食の動きが実に面白いので、以下の連続写真で紹介することにしましょう。

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よく見ると触手の1本が口のところへ

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触手の先は摂餌中のものだけが黄色い房状

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 さらに近寄ってみるとこんな感じ

毒々しいまでにカラフルなアデヤカキンコとは対照的に地味~なこのナマコですが、よく見ていると1本の触手の先だけがきれいなクリーム色に茶褐色の斑点になっていて、最初見たときはミノウミウシかなにかが食べられているのかと思いました。しかし、よくよく見るとこれは枝を拡げていた触手が縮んだため色が濃くなっていたのです。そして、この部分を円の中心にある口に運び、濾し取った餌を食べているのです。10本の触手は代わる代わる順番に口に運ばれますが、この動きには「意思」のようなものが感じられます。目も顔もない、一見植物のような生物が、意思をもって動いているように見えるのはなんとも不気味なもので、まるで宇宙からやってきた未知の生物みたい。逆に怖いもの見たさで目が離せなくなってしまいます。(笑)

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全体が触手の先のようになって、瞬間的に砂に潜ってしまった

どんな反応があるか興味があったので、ちょっと指の先で触手に触れてみたところ、瞬間的に少し引っ込みます。面白いので別の触手にも触れてみましたが、少し強く触れすぎたみたいで、すべての触手は一瞬にして黄色い房状に変身し、目にも止まらぬ速さで砂の中に引っ込んでしまいました。慌てて、なんとか1枚だけ撮ったのが、上の画像。それにしても、あんな大きな触手を持つナマコの本体っていったいどれだけの大きさなんでしょうか? 砂の中に潜む巨大ナマコを想像したら、なんだか背筋に寒気さえ覚えてしまったのでした。



“未知との遭遇”に3 件のコメント


  1. shochi

    魚っちゃ~さん、お久しぶりです。
    久しぶりの動画が鯨とは!すごい。鯨は私はまだ食卓と昔の給食(鯨の竜田揚げ、笑)でしかみたことがありません。実際の迫力と感動は文字で語れない程だったことと察します。船によってくるというのは、仲間と勘違いしてなのでしょうか^^尾鰭があるのに哺乳類というのは、なんだか魚と人間の距離感をぐっと縮めてくれる存在です。
    鯨といえば捕鯨、捕鯨といえば最近頻繁にニュースにあがるオーストラリアの反日活動家ですが、オーストラリアは「鯨ショー」、観光客を船に乗せて鯨を求めて海にでますでしょう。この観光産業はかの地ではドル箱と聞いています。私はなんだか矛盾してるなと思うこと暫し、本当に鯨が可愛いのであればそっとしてあげて欲しい所です。

  2. 魚っちゃー

    shochiさん、おひさしぶりです。
    捕鯨やホエールウォッチングの是非にはいろいろ意見があって、それぞれ「なるほど」という部分もあれば、「ちょっとなぁ・・・」という部分もあり、なかなかコメントしずらいところです。ホエールウォッチングの経済的効果については、地域が潤うことにより野生動物保護とのバランスがとりやすくなるという点では、まあ肯定的に捉えています。ただ、このことを考えると、昔故ジャック・モイヤー先生が御蔵島のドルフィン・ウォッチングに行くとき、いつも言っておられた言葉を思い出します。
    「イルカも野生動物だから、いつ行っても会えると思ってはダメ。会えなければまた来ればいい」 商業化されることの弊害はまさにここにあると思います。お金を払ったほうは対価を求めたくなるのは自然だし、お金をとったほうはなんとか見せたいと思う。そこに生じる無理が、クジラにストレスを与える可能性については、考慮する必要がありますね。これはウォッチングの事業者だけでなく、むしろ、そのような誤解を与えるメディアとか、旅行業界などに大きな責任があると思います。
    野生動物だかこそ、一期一会の出会いを愉しむ。今回も予期もしない出会いだったことで、素直にふれあうことが出来た気がします。

  3. shochi

    「野生動物だかこそ、一期一会の出会いを愉しむ。」
    これには大変共感を覚えます!ダイビングをされてる魚っちゃーさんには馴染みの深いことと思いますが、私はどうもこれを忘れてしまいがちです。
    これを観光業界がどう顧客にメッセージとして伝えるか、ですね。