「益田一と日本の魚類学」展

「益田一と日本の魚類学」展示解説書

「益田一と日本の魚類学」展示解説書

残念ながらすでに終了してしまったので情報としては時遅しなのですが、神奈川県立生命の星・地球博物館で開催されていた特別展「益田一と日本の魚類学」の最終日、写真家の中村宏治さんの講演もあるということで遅まきながら見に行ってきました。実際見るまでは「どうせホルマリン臭い標本が並んでいるのだろう」ぐらいの感じで内容には大きな期待はしていなかったのですが、巧みに構成された標本、図版、撮影機材、解説などの展示には思わず引き込まれ、気が付けば1時間以上も見入ってしまっていたのでした。さらに、この特別展のために編纂された解説書も実に内容豊富で興味深く、さっそく購入して楽しみに読んでいるところです。

益田一氏の一番弟子を自認する中村宏治さんの講演には、大勢のベテラン・ダイバーも駆けつけ、日本の魚類学黎明期の熱い雰囲気が会場に溢れていました。私がフィッシュウォッチングに興味を持ち始めたのは17〜18年ぐらい前のことになりますが、伊豆でお世話になったガイドの瓜生さんを通じて生前の益田氏と同席する機会も幾度かありました(恐れ多くてとても直にお話はできませんでしたが・・・)。その頃は益田氏もすでに潜ることを止めていましたが、後継者たちによりその仕事が受け継がれ、ようやく一般のダイバーにも魚類学に対する興味が浸透しはじめた時期でした。当時は伊豆あたりでも新種が発見されたり、未記載種が整理されたりということが当たり前のようにあり、それに惹かれてフィッシュウォッチングにのめりこむダイバーもどんどん増えていったのでした。

あれから10数年、魚類学の進歩は目をみはるほどで、図鑑やネット上の情報もあふれかえり、新種の記載や分類の見直しもあって、ちょっと油断していると一般ダイバーにはついていけないほどのめまぐるしさです。学問としてどんどん深化し、精緻になっていくのは当然のことではありますが、個人的には当時のある意味乱暴でさえあった雰囲気が懐かしいような気もします。益田氏の業績が決してそのようないい加減なものではなく、情熱と努力の賜物であったことは、今回の展示会をみれば一目瞭然です。それでも、未知のことだらけのフロンティアを開拓していく興奮と快感は、あの時代だからこそ得られたのではないかと、伊豆の猛者たちを羨ましくも思うのです。



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