ミステリーサークル大盛況

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巨大産卵床をつくるシッポウフグの仲間

一昨年NHKの「ダーウィンが来た!」放映の後全国的に有名になった奄美大島のミステリーサークル。一昨年、昨年は6月ぐらいに見に行ったのですが、今年は4月の時点で既に数個のサークルが確認されているということで、急遽4月末に奄美へと向かいました。これまでは、観察できたサークルは2個前後、観察できる水深も20m近くとやや深かったため、限られたステージしか見られませんでした。しかし、今回は合計9個もの各ステージのサークルが見られたので、いろいろ興味深いシーンを観察できた一方、一層謎が深まることも多々あり、このフグの生態の奥深さを改めて実感したダイビングとなりました。

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貝殻などの破片を運んでくるサークル工事中のオス

すでに知られているようにミステリーサークルの製作者はまだ種名が明らかでないシッポウフグの仲間で、今後研究者によりおそらく新種として記載されるものと思われます。ミステリーサークルをつくるのはオスのフグで、ここにメスを招き入れて産卵させるのが目的なのですが、不思議なことにふだんはメスの姿はほとんど見られず、産卵の時だけどこからともなく現れるということです。残念ながら、通常の時間帯でのファンダイビングではなかなかメスに出遭うことは難しく、ましてや産卵のシーンを見るというのも困難なようです。

ミステリーサークルが観察できるのは4月から7月はじめぐらいまでですが、最も盛んにサークルづくりが行われるのは4月ぐらいのようで、今回見た9個のサークルの中には、つくり始めて間もないもの、進捗率50パーセントぐらいのもの、卵を守っているもしくは孵化が終わって放棄されているものど、およそ3つのステージがありました。なぜか100パーセント近く完成したサークルはひとつも見られませんでしたが、これは産卵行動のサイクルが潮汐などと関連しているためという見方もあるようです。しかし、季節などによってサークルが完成するまでの期間などにも差があるそうで、必ずしもこれまでの観察結果から導かれた説が正解とは言えないとも考えられています。

■今回観察できた9つのサークル

(A)水深13m付近のつくり始め

(A)水深13m付近のつくり始め

(B)水深13m付近の工事中

(B)水深13m付近の工事中

水深15m。前日から作り始めていたもの

(C)水深15m。前日から作り始めていたもの

(D)水深15m付近。前日は卵保護中だった

(D)水深15m付近。前日は卵保護中だった

(E)水深15m付近。最も活発に工事中

(E)水深15m付近。最も活発に工事中

(F)水深15m。(E)のすぐ隣の古いもの

(F)水深15m。(E)のすぐ隣の古いもの

(G)水深18m付近の工事中

(G)水深18m付近の工事中

(H)水深18m付近の古いもの

(H)水深18m付近の古いもの

(I)水深18m付近。前日には見られなかった

(I)水深18m付近。前日には見られなかった

サークルづくりの進捗度はフグの個体によっても差があり、熱心に工事するフグとそうでないフグではかなりの差があります。例えば上の画像(C)は前日からつくり始めの状態を確認できていましたが、翌日もあまり進展は見られませんでした。一方、(I)のつくり始めは前日には確認されていなかったのですが、まる1日でおよその形ができています。いちばん熱心に工事していたのは(E)のサークルで、2日目の観察時は流れが強く他のサークルではほとんどフグの姿が見られなかったにもかかわらず、(E)ではいつも通り盛んに作業が進んでいました。

サークルづくりが最も盛んなこの時期は、1匹のフグが卵を守りながら、平行して新たなサークルづくりに取り掛かることも珍しくありません。今回もふたつのサークルを行き来するフグの様子を何回か見ることができました。このことから、サークルは再利用されることなく、一度の産卵の都度つくられることが分かります。

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砂煙をあげてサークルづくりに励むフグ

フグがどのようにしてサークルをつくっていくのかという過程も、全てとは言えませんが観察することができました。花模様のような凹凸はフグがサークルの直径方向に泳ぎながら、鰭を使って砂を掘っていくのですが、場所によって力の入れ具合を変化させ、深く掘ったり浅く掘ったり、あるいは巻き上げた砂を沈澱させる・・・ということを繰り返してあのような幾何学的なパターンにしていくのです。その様子はビデオで撮影したので、編集が終わればまた紹介することができると思います。それにしても、小さなフグが何を基準にしてあのような巨大な模様を正確に描くことができるのか・・・。これだけは大きな謎としてこの先の解明が待たれます。

 



“ミステリーサークル大盛況”に5 件のコメント


  1. 大方洋二

    こんにちは。今回はすれ違いでしたね。
    ミステリーサークルをつくるフグの生態は、本当に不思議です。
    一昨年「ダーウィンが来た!」のロケで3サイクル観察した結果、
    卵のふ化を大潮に合わせるために逆算してつくり始める、という
    法則がわかりました。
    ところが、昨年BBCのロケのときはこれがまったく当てはまりません
    でした。かなり短時間でサークルを完成させたり…
    当初は台風の影響かと思いましたが、一昨年もありましたから、
    フグの気まぐれとしかいいようがありません。
    今月下旬に、国立科学博物館の研究者とフグの調査に行きます。

  2. watcher

    大方先生、こんにちは。

    年にいちどぐらい見に行くぐらいでは推測のしようもありませんが、本当に知りたいことだらけのミステリーサークルです。他のさかなの例では繁殖期初期と最盛期、後期で生態が少し変わることもありますが、このフグの場合はどうなのでしょうか? 4月は繁殖する個体の数が多く競争の激しいことが、サイクルの違いなどに影響するのかな・・・などとも思ったりしました。月末の結果楽しみにしていますので、報告お待ちしております!

  3. 大方洋二

    watcherさん、こんばんは。

    そもそもミステリーサークルをつくり始めるのは5月ごろと思っていましたから、4月に観察したのは一昨年からです。そのようなわけで、データはありません。昨年は伊藤くんの観察によると4月と5月はたくさんできていたようですが、6月(BBCのロケ)にはひとつ(したがってオスは1尾)しかなく、メスは2尾しかいませんでした。
    今回9個のサークルの写真を拝見したとき、ふたつのポイントの合計かと思っていましたが、水深を見るとひとつですね。すごい数で、たぶん最高記録でしょう。

  4. 魚っちゃー

    そうなんです! すべて同じポイントで、伊藤さんの観察によるとオスは4個体いるらしいので、すでに放棄されたサークルを考慮に入れると平均1個体につき2個弱のサークルに係わっていることになりますね。今年は例年より水温が低いですから、このフグの繁殖期は思ったより早くから始まるのかもしれません。今後水温が上がるととともに少しずつペースが落ちるとすると、6月ごろはすでに終期ということも考えられませんか?

  5. 大方洋二

    そうかもしれませんね。
    これまでの観察で、卵がふ化した翌日あるいはふ化当日に新たなサークルをつくり始めることはわかっていましたが、繁殖の最盛期には卵保護中(ふ化の数日前)につくり始めるということも考えられますね。
    卵保護が大切にもかかわらず、姿を消すことがよくありましたから、場所を探しに行ったりつくり始めていた可能性もありますね。